ラボ契約(ラボ型開発)とは?

エンジニア不足を解消する手段として注目を集めているラボ型開発(ラボ契約)ですが、多くの企業さまとのお取引の中で、ラボ型開発の本来の役割を正確に理解されていないため、プロジェクトがうまく進行していないケースが散見されます。

そこで本記事では、ラボ型開発(ラボ契約)で実現可能なことや、成功へ導くために必要なポイントを分かりやすく解説いたします。

システム開発をご検討中の企業さまにとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

ラボ契約(ラボ型開発)とは?

ラボ契約とは、社外に専属の開発チーム(ラボ)を編成し、開発を進めるための契約形態を指します。一方、ラボ型開発とは、このラボ契約を活用した開発手法を指します。この2つはしばしば混同されがちですが、それぞれ異なる意味を持っています。

従来、開発業務を外部に依頼する際は、請負型が主流でした。請負型では、ソフトウェアやシステムなどの成果物単位で契約を行い、成果物が完成した時点でチームは解散します。

これに対してラボ契約は、一定期間(通常は数カ月から1年程度)にわたり開発チームを確保し、発注者の指示のもとで開発業務を進める契約形態です。契約期間中であれば、プロジェクトの進捗や状況に応じて開発内容を柔軟に変更することが可能です。このため、長期的な開発や変動が予測されるプロジェクトに適した形態となっています。

請負型開発との違い

請負型開発とラボ型開発の違いは、依頼元が契約を通じて確保できる「成果物」にあります。ラボ型開発では、一定期間にわたり希望するスキルを持つ開発メンバーを確保することができます。一方、請負型開発では、事前に定義された仕様通りのシステムを完成品として納品してもらう契約形態です。このように、契約の成果が異なるため、それぞれの開発形態には特徴やメリット、注意点が異なります。

請負型開発では、開発中に仕様変更が発生すると、追加料金が発生し、コストが膨らむ可能性があります。一方、ラボ型開発では、契約期間内であれば仕様変更が発生しても追加料金がかからないため、コストを抑えることが可能です。

「希望するシステムを確実に納品してほしい」というニーズには請負型開発が適していますが、「長期間にわたり同じ担当者とプロジェクトを進めたい」という場合にはラボ型開発が適していると言えるでしょう。このように、それぞれの契約形態には独自の特徴やメリットがあります。自社の開発案件に適した形態を選ぶことが、プロジェクト成功の鍵となります。

ラボ型開発のメリット

ラボ型開発には、多くのメリットがあります。代表的なメリットを解説します。

人件費などのコストを抑えられる

ラボ型開発の最大のメリットは、コストを抑えられる点にあります。請負型開発では、仕様変更や機能追加が発生するたびに追加料金が発生しますが、ラボ型開発では契約期間内であれば追加料金なしで柔軟に仕様変更が可能です。さらに、海外の人材を活用することで、人件費を抑えられるという利点もあります。

一定期間優秀な人材を確保できる

ラボ型開発は、希望する期間に希望する人材を確保できる契約形態です。この仕組みにより、必要なスキルを持つ人材を指定し、必要な期間だけ確保することが可能です。

一方で、請負型開発では納品が完了するとプロジェクトが解散し、メンバーは他のプロジェクトに移るため、納品後に担当メンバーを確保できる保証はありません。しかし、ラボ型開発では優秀な人材を継続して確保できるという大きなメリットがあります。

自力で人材を採用・育成する必要がなくなる

自社で優秀な人材を採用し育成する場合、採用費や育成費といったコストが発生します。しかし、ラボ型開発を活用すれば、これらの負担を軽減できます。希望するスキルを持つ人材を指定し、手間をかけずに確保できる点は大きなメリットです。

仕様変更、修正などを臨機応変にできる

ラボ型開発では、契約期間内であれば、追加料金なしで仕様変更や修正に対応してもらうことが可能です。そのため、プロジェクト開始時に仕様が完全に決まっていなくても、契約期間中に調整しながら進める柔軟な対応ができます。

開発のノウハウを蓄積できる

ラボ型開発では、開発メンバーを継続的に確保できるため、開発ノウハウを蓄積することが可能です。同じメンバーを継続して確保できることで、自社システムの特性や使用するプログラミング言語、業務フローに慣れたメンバーに引き続き作業を依頼できます。その結果、効率的な開発が進み、ノウハウの蓄積にもつながります。

機密性の高い案件も依頼しやすい

ラボ型開発では、一定期間にわたり開発メンバーを確保できるため、自社のプロジェクトに関わるメンバーをある程度限定することが可能です。そのため、機密性の高い案件でも安心して依頼できます。たとえば、新商品や新サービス、社外秘の技術が関わるプロジェクトにおいても、外部漏洩のリスクを抑えながら開発を進めることができる点が大きなメリットです。

ラボ型開発を導入するにあたっての注意点

ラボ型開発には多くのメリットがありますが、一方で注意すべき点もあるので、解説していきましょう。

一定量の発注をしないと費用対効果が低くなる

ラボ型開発では、開発メンバーを確保できる一方で、取り扱う案件が少ない場合は費用対効果が低下する可能性があります。たとえば、プロジェクトがない期間でもメンバーを確保しておく必要がある場合、その期間分のコストが発生してしまうため、無駄な出費となるリスクがある点に注意が必要です。

開発チームの構成に時間がかかる

ラボ型開発でプロジェクトを始める際には、案件に適したスキルを持ったメンバーを集め、仕様や開発方針を詳細に調整する必要があります。そのため、開発チームを構成するための時間と手間がかかることを認識しておくことが重要です。ただし、この準備が整えば、プロジェクトを効率的に進めることができます。

開発会社の得意分野・実績を見極める

ラボ型で仕事を依頼する開発会社の得意分野や過去の実績を正確に把握することが重要です。明らかに難易度が高い案件に対して、スキルの低い人材しか揃っていない開発会社に依頼すると、プロジェクトが失敗するリスクが高くなります。

円滑にコミュニケーションできる体制を整える

ラボ型開発では、開発メンバーが依頼元の担当者から詳細な仕様を伝えられ、開発中も綿密な調整が必要です。そのため、スムーズなコミュニケーションを確保するための体制を整えることが重要です。

担当ごとに窓口を決め、定期的なミーティングを開く、またはチャットツールを利用してコミュニケーションを行うなどの対策が必要です。

発注側のマネジメント・ディレクションが重要

ラボ型開発は仕様変更に柔軟に対応できる契約形態ですが、その反面、発注側がプロジェクトを的確にコントロールすることが求められます。発注側の担当者がプロジェクトメンバーと適切に意思疎通を図り、マネジメントやディレクションを正しく行うことが重要です。

まとめ

この記事では、ラボ型開発について詳しく解説しました。ラボ型開発は、担当者を指定し、期間契約で行うオフショア開発の契約形態です。

この契約形態には、開発ノウハウの蓄積が可能で、契約期間内であれば仕様変更による追加料金が発生せず、コストを抑えられるといったメリットがあります。

オフショア開発を希望し、できるだけ開発費を抑えつつ、優秀な人材を確保したい場合には、ラボ型開発は非常におすすめの契約形態と言えるでしょう。