システム開発の手法の中でも、特に認知度が高いとされるのがウォーターフォールモデルです。この手法は、特に大規模なシステム開発において、アジャイル開発が適さないとされるプロジェクトで採用されるケースが多いです。
本記事では、ウォーターフォールモデルの概要、メリット・デメリット、開発工程の流れについて詳しく解説します。また、アジャイル開発との違いについても取り上げていますので、ぜひご一読ください。
ウォーターフォール開発とは?
ウォーターフォールモデルとは、システム開発を上流工程から下流工程へ順次進めていく手法のことです。「ウォーターフォール」とは滝を意味し、開発工程を細かく分け、川上から川下に向かって流れる滝のように進行していくことから、この名称がつけられました。
このモデルは、品質を重視した開発や大規模なシステム開発に適しており、現在でも多くの現場で採用されています。
また、ウォーターフォール型開発とも呼ばれ、同じ意味で使用されます。関連するキーワードとして、V字モデルやW字モデルが挙げられますが、これらも基本的にはウォーターフォールモデルの工程をベースにしています。これらのモデルでは、上流工程が**どのテスト工程(フェーズ)**に対応するのかが明確に定義されているのが特徴です。
ウォーターフォールモデルの特徴
ウォーターフォールモデルは、各開発工程をトップダウン形式(一方向)で進めることを前提とした手法です。基本的に一つの工程が完了してから次の工程へ移行するため、途中で手戻りが発生することは想定されていません。そのため、万が一手戻りが必要になった場合には修正が困難ですが、開発は当初の要件通りに進められるという特徴があります。
特に大規模開発では、高品質な成果物が求められるケースが多いため、ウォーターフォールモデルが採用される場面が多いです。この手法は、事前の計画策定と安定した開発進行を重視するプロジェクトに適しています。
ウォーターフォールモデルの将来性
ウォーターフォールモデルが提唱されてから半世紀以上が経過し、近年ではアジャイル開発と呼ばれる新しい開発手法が広く普及しています。その影響もあり、ウォーターフォールモデルは時代遅れだといった意見を耳にすることも増えました。
確かに、ソフトウェアやハードウェアのニーズが多様化・拡大した現在において、ウォーターフォールモデルが応用しにくい場面があるのは事実です。しかしながら、このモデルには大規模開発に適している、機能や予算を事前に明確化できるといったメリットも存在します。
また、開発に時間がかかるというデメリットはあるものの、品質の担保という点においてはアジャイル開発よりも優位性を持つ場面もあります。このため、ウォーターフォールモデルは一概に時代遅れと切り捨てることはできません。
現在、ウォーターフォールモデルの将来性に疑問を持つ声もある一方で、アジャイル開発と併用されるケースは今後も続くでしょう。アジャイル開発がウォーターフォールモデルを完全に代替するわけではなく、プロジェクトの規模や特性に応じて使い分けが必要です。ウォーターフォールモデルの強みが活かせる場面では、今後も引き続き活用されると考えられます。
ウォーターフォールモデルのメリット
さらに、どの工程で時間がかかるのかを把握しやすいことから、事前に必要な人員を確保しやすく、スケジュール管理の精度を高めることが可能です。こうした点が、大規模開発の場面でウォーターフォールモデルが選ばれる理由の一つとなっています。
一定の品質を担保できる
ウォーターフォールモデルでは、開発開始前に詳細なスケジュールを策定し、各工程ごとのタスクがあらかじめ明確に決められています。そのため、一定の品質を確保しやすい点が大きな特徴です。
このモデルでは、各工程を順番に完了させてから次の工程へ進むため、大きな変更や手戻りが発生しない前提で開発が進行します。その結果、柔軟な対応が求められるアジャイル開発と比べても、品質を安定させやすいという利点があります。
前述の通り、ウォーターフォールモデルは、上流工程で入念に計画を策定した上で開発を進めます。そのため、初期段階から必要な作業内容や期間、工数が明確になり、今後の予算管理やリソースの確保が容易である点がメリットとして挙げられます。
ウォーターフォールモデルでは、初期段階で最終的な目標が明確に設定されるため、チーム全体で一貫した方向性を共有しながらプロジェクトを進行できます。これにより、目標がブレるリスクを抑え、当初の想定通りの成果物を正確に実現することが可能です。
ウォーターフォールモデルのデメリット
ウォーターフォールモデルは、プロジェクト全体の流れや各工程が最初から詳細に計画されているため、途中での仕様変更が難しいというデメリットがあります。そのため、要件定義がプロジェクトの成否を左右するといわれることも多く、基本的には開発途中での仕様変更を想定しない形で進められます。
ウォーターフォールモデルでは、設計が完了しない限り開発工程に進むことができないため、成果物の確認までに時間がかかるという特徴があります。特に、途中の仕様変更に対応しにくい点でも述べたように、要件定義を十分に詰めた上で開発を進める必要があります。
ウォーターフォールモデルでは、開発が開始されてからの仕様変更が難しいため、企画からリリースまでの間に外部環境やターゲットユーザーのニーズが変化することがあります。デジタルデバイスの普及やIT化・DX化の進展が急速であるため、ソフトウェアやハードウェアもその変化に迅速に対応する必要があります。
上流工程で十分に計画された仕様でも、開発中に仕様変更や仕様通りに進んでいないことが判明する場合があります。
ウォーターフォールモデルの流れ・工程
ウォーターフォールモデルにおいて、要件定義は非常に重要なフェーズであり、システムの目的やゴール、ニーズを明確にすることが求められます。要件は大きく分けて業務要件とシステム要件の2つに分類され、さらにシステム要件は機能要件と非機能要件に分けて定義する必要があります。
要件定義書に基づいて、ユーザーが使用するレベルの詳細な設計を行う工程です。要件定義はシステムの完成時の姿を言語化したものであり、まだ詳細な設計は行われていません。したがって、基本設計を通じて、完成までに必要な開発作業や関連する要素を整理する必要があります。
基本設計をさらに現場での開発レベルに細分化する工程が詳細設計です。この工程では、エンジニアやプログラマーが実際に行う作業を明確にし、開発者が円滑に作業できるようにすることが目的です。
詳細設計が完了した後、いよいよ開発が始まります。この段階では、実装やコーディングが行われ、要件定義で指定されたプログラミング言語を用いてシステムの開発が進められます。
コーディングによって作成されたプログラムが正常に動作するか、機能使用中にエラーが発生しないかを検証する工程です。この段階で、もし当初の計画通りに動作しない場合は、詳細設計書に記載された処理フローに従って修正を行います。
テストが完了し、問題なく動作することが確認できてはじめてリリースとなります。
ウォーターフォールモデルの活用方法